【書評】幸福の「資本」論―あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」

 

こんにちわ。
管理人のはちく(@hachiku_89)です。

 

今回は、橘玲(たちばな あきら)氏の

幸福の「資本」論――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」

を取り上げさせて頂きます。

 

橘玲氏については、「ゴミ投資家のための人生設計入門(1999年発行、『世界にひとつしかない「黄金の人生設計入門」に改題)」を出版した頃からずっと愛読させていただいており、氏の思想はわたしの人生設計に大きな影響を与え、実際に行動させるまでになりました。

 

著者の書籍はほとんど読ませてもらってるので、熱心なマニアとも言えるでしょう。

橘玲氏の新書「幸福の「資本」論」ですが、今回もまた自分の中に人生のヒラメキを与えてくれる一冊でした。

 

 

3つの資本 「金融資産」「人的資本」「社会資本」

本書の中では、「金融資産」「人的資本」「社会資本」の3つが人生の幸福感を高める柱になると主張してます。

 

「金融資産」

「お金持ちになれば幸せ」という分かりやすい話です。

橘玲氏の書籍についても、初期の頃は「経済的独立を達成するには」を目標として掲げ、最適戦略を探求した書籍が次々と発行されてました。 

詳しいことは文末を参照してください。

 

「人的資本」

「人的資本は冨の源泉」といいます。

 

「働く」という意味は、経済学的には「人的資本を労働市場に投下し収入を得る」行為に還元されるのです。

つまり、人的資本をいかに活用できるか、あるいは活用できなかったかで「経済格差」が広がっていくのです

 

しかし、筆者の解説は続きます。

人的資本を最大化するには風俗営業を始めた方がいいのに、そうならないのはなぜか。
それは、働く行為には「自己実現」が優先されるからだと。

職業に貴賎はないとしても、風俗業は世間的には〝汚れ仕事〟とみなされているため、その分野で成功しても自己実現できないのです。

 

理想の働き方というのは、以下の2つを同時に満たすものになります。

①人的資本からより多くの富を手に入れる。
②人的資本を使って自己実現する。

 

さて、「自己実現」というキーワードを端緒に、著者の日本企業の問題指摘が容赦なく始まります。

企業であれ、個人であれ、知識社会に適応できなければ脱落するだけだ。 グローバル化やリベラル化に対応できない人事制度を固守している日本企業が、知識ビジネスの最先端で〝負けつづける〟のは当たり前のことです。

グローバル化した日本企業は老朽化した人事制度を固守しているため、現地採用の仕事を覚えた海外の若者を流出させ、次々と欧米の企業へ転職が続き優秀な人材を獲得できない状況を指摘します。

現地採用の若者は出世できず、常に日本本社からの差別的待遇を受け続けるわけですから、仕事を覚えたらフェアの人事制度を持つ海外企業に転職するという当然の結果です。

これは、日本企業は賃金を与えて職業訓練させている間抜けな実態が発生しているのです。

 

海外企業では、明確な業務スキルを提示し求人しているので、そのスキルに合致するなら就職できる。
人材の流動性が高いです。
(スキルの持たない若者は職につけず失業率が高くなってしまうというデメリットがあります。)

 

日本企業は若者を成長をさせて育てるという考えなので、若者ほど採用率は高くなりスキルがある中高年の採用を控えるわけです。

そういう一連の人事制度を変えることが出来ないというのが日本企業の問題ですね。

 


 

私たちは、知識社会化に適応できない「日本の会社」の外側で自らの人的資本を育てるほかありません。

昨今「働き方改革」という言葉が賑わっていますが、大企業の正社員や公務員の既得権益を損なう話にしかなりませんので、おそらく頓挫することになるでしょう。
期待してもムダです。

 

現代サラリーマンの戦略としては、社外での活動を増やし、市場価値を確認しつつ人的資本を高めるしかありません。
「副業解禁」が第一段階の突破口になると思います。

人生戦略を考えると、大企業ですら終身雇用を約束出来るわけが無いのですから、副業が出来ない会社に勤めないことですね。

伽藍とバザール(ジョブ型とメンバーシップ型の働き方)

 

雇用の流動性がない(伽藍の)会社では、いったん失敗した社員は生涯にわたって昇進の可能性を奪われてしまうのです。

大きなリスクを取ってイノベーションに成功したとしても、成果に相応しい報酬を与えられないことです。

日本的雇用制度は、「リスクを取るのはバカバカしい」という強烈なインセンティブを社員に与えています。

この「伽藍」という言葉は、著書「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」のなかででてくる「伽藍とバザール」という働き方をしめすキーワードです。

 

私も伽藍の世界で働いていたため、仕事での失敗や社内の評判がついてまわりました。
失敗すると挽回の機会は与えられず、サラリーマン人生の消化試合をすることになるのです。

 

「社会資本」

このテーマでは、マイルドヤンキーや定年退職者を題材に社会資本の考え方を教えてくれます。

所得が低くても、地元の小中学校からの馴染みのメンツに囲まれて、幸福感が高い生活をおくるマイルドヤンキーたちを「プア充」と呼ぶそうです。

定年退職者は、退職を機に会社とのつながりが切断されるため、人的ネットワークがゼロになります。
そうなると、定年後余生というのは「家庭の粗大ゴミ」として生きることになり満足度が低く辛い時間を過ごすということです。

 

本書では、人生設計として周りの「友達」をどう持ち続けていけば良いのか、どういうつながりをこれから目指していけば良いのかが展開されてました。

 

知識社会では、クリエイティブクラスのフリーエージェント戦略で生き抜け

「クリエイティブクラスとマックジョブ」に分けて、人的資本の活用の仕方が説明されてました。

もちろん知識社会では、クリエイティブな仕事をする人材が人的資本としての価値が高い事になります。(=報酬が多い)

 

やりがいと幸福度を高い状態で、働くにはどうするか。

それが「フリーエージェント」戦略ということです。

会社のなかで専門性を活かせるごく少数の恵まれたひとを除けば、人生のどこかの時点で組織の外に出て、知識や技術、コンテンツのちからで大組織と取引する「フリーエージェント」化が、高度化する知識社会の基本戦略になるでしょう。

 

フリーエージェントとして、活動していくには以下のようなポイントがあります。

①好きなことに人的資本のすべてを投入する。
②好きなことをマネタイズ(ビジネス化)できるニッチを見つける。
③官僚化した組織との取引から収益を獲得する。

ユーチューバーなんかも、忠実にこの戦略を実施してますね。

 

この1,2,3のポイントは、ベンチャー企業の事業計画にもつながる話です。

 

官僚化した組織からは、イノベーションは起こりません。
大企業は自らのイノベーションを放棄して、ベンチャー企業へ投資しイノベーションを取り入れる「アウトソース」化を行うのです。

それにともなってベンチャー企業のエグジット戦略も、上場から事業を大手企業に売却することへと変わっていきました。

 

フリーエージェントやベンチャー企業が、幸福度高く働く事について、非常にタメになる一節でしたね。

 

管理人はちく(@hachiku_89)のまとめ

まとめとして、「マイケル・ジャクソン」と「宝くじ当選者」の人生は幸福だったのかを「3つの資本」の考え方で解説してました。

 

マイケル・ジャクソンは、成功を収め「3つの資本」を兼ね揃えましたが、すべての幸福感に慣れてしまい仕事の不安から不眠に悩まされ睡眠剤の過剰投与により死亡してしまいます。

 

宝くじ当選者は、一夜にして一気に「金融資産」が跳ね上がり経済的独立を果たします
仕事を辞め(人的資本ゼロ)、友人親族からお金の無心をされ交友関係を断ち切ってしまいます(社会資本ゼロ)
その後は、投資や浪費を重ね金融資産を使い果たし、3つの資本がゼロになってしまうということです。

 

そうなると、人間は「幸福を追っている時が幸せ」という結論になりそうです。

 

 

最後に、本書の中に凡人にとっての「幸福な人生のポートフォリオ」というのがあったので取り上げたいと思います。

 

社会資本は

「強いつながり」を恋人や家族にミニマル(最小)化して、友情を含めそれ以外の関係はすべて貨幣空間に置き換える

 

人的資本と金融資本は

ひとつの組織(伽藍の世界)に生活を依存するのではなく、スペシャリストやクリエイターとしての人的資本(専門的な知識や技術、コンテンツ)を活かし、プロジェクト単位で気に入った「仲間」と仕事をします。

すべてのサラリーマンが定年退職で人的資本と社会資本の大半を失ってしまいます。人生100年時代を考えるならば、年齢にかかわらず弱いつながりを維持しつつ、フリーエージェントとしてプロジェクト型の仕事をする「生涯現役戦略」の方がはるかに効果的なことは明らかです。

 

 

まとめると

①金融資産は分散投資する。
②人的資本は好きなことに集中投資する。
③社会資本は小さな愛情空間と大きな貨幣空間に分散する。

 

 

本書を始め、橘玲氏の書籍をまだ読んだ事が無い人は、ぜひ一冊買って欲しいと思っています。

本書は、橘玲ファンからするとこれまでの書籍の焼き直しであるという批判もあります。
(アベノミクスの評価などの情報がアップデートされているのでそれはそれで価値があると思います。)

しかし、私は著者がこれまで模索してきた人生設計の最適解を求める旅路がやっと終わったんだなという感慨を持ちました。

あとは、個人がどう行動に変えるかだと思います。
私も影響を受けて、実際に行動を起こし良い結果が出るよう日々実験をしている最中です。

今回も深い学びがある一冊でした。

 


 

多くの方が、「お金持ちになるには」ということに興味を持っていると思いますので、以下の本をおすすめします。

「世界にひとつしかない「黄金の人生設計入門」」
(不動産や保険の考え方について解説)

「お金持ちになれる黄金の羽の拾い方」
(マイクロ法人をつくって節税しようという事が取り上げてます)

「臆病者のための億万長者入門」
(インデックス投資の有用性説明してます)