こんにちわ。管理人のはちく(@hachiku_89)です。
先日、裁判所で行われた「裁判員選任手続き」に参加してきました。
タイトルを見て分かるように、私(はちく)は裁判員に選ばれること無くお役御免となったのですが、貴重な経験が出来たのでこれから選ばれる人々の参考になればと思い記事にしたいと思います。
本記事は「裁判員候補から裁判員選任手続き」までの全体的な流れを説明する構成とご理解ください。
《注記》
裁判員法101条1項前段 において「裁判員候補であることを公にすること」は、法律上禁止されています。
が、本記事は
裁判所にお越しいただき選任手続に参加されたものの,くじ等により裁判員に選ばれなかった裁判員候補者の方については,裁判員候補者名簿から除かれ,同じ年に別の事件の裁判員候補者に選ばれることはありませんので,本人の同意があれば,裁判員候補者であったことを公にしても問題ありません。(引用)
(出典)裁判所HP「裁判員候補者であることを公にすることは法律上禁止されていますので,ご注意ください」
上記裁判所見解に基づき、執筆しております。
毎年年末(11月〜)
裁判員候補者名簿記載通知の封筒が届く
いわゆるジャブです。
あなたは選挙人登録者名簿から無作為に選ばれた「裁判員候補者」ですよ。というお知らせです。
(選挙人登録者名簿から抽出、年齢18歳以上が対象)
選ばれる確率は0.2%
統計的にはほぼ選ばれること事は無い確率だったはずなのに、私が選ばれてしまいました。
裁判員候補に選ばれると、裁判所より「裁判員候補通知の封筒」が届きます。
最高裁判所から、封筒が届いてるーー!
どーすっかなぁ? pic.twitter.com/H2Ju1gJpJb— hachiku (@hachiku_89)
中身には丁寧に、最高裁判所長官からの裁判員制度への理解を求めるお手紙付き。
封筒には、裁判員制度の解説マンガやリーフレットが入ってて、概ね
・すぐ選ばれませんよ
・辞退もできますよ
・裁判員を出来ない理由があったら教えてね(調査票)
と、不安を和らげるようなソフトな編集構成。
私ら一般国民も貰ったリーフレットに一通り目を通すことで、過度な不安感は取り除けます。
ちなみに入っていた「調査票」に答えて、返信。
実際、ここから裁判の為に呼び出されることは稀ですからね。
裁判の2ヶ月前
選任手続き期日のお知らせ・質問票が届く
この一年裁判員候補で呼ばれることは無いだろうと思ってたら、前触れ無く「選任手続き期日のお知らせ・質問票」の封筒一式が届きます。
中身には、「何月何日何時に裁判所に来てね」というお知らせ(呼出状)付きです。
ここでやっと裁判員制度が他人事では無くなりました。
今回も出席するしないを記述する「質問票」が同封されているのですが、
その日、仕事があるから
という理由程度ではダメだぞと割とプレッシャーをかけてくる解説リーフレットが付いてきます。
ふむー、これは行くしか無いようです。
【もし行かなかったら】
調べてみたところ、裁判員法102条により「過料10万円」に処されるとのこと。
(出典)裁判員候補者として呼出しを受けたにもかかわらず,裁判所に行かないと,罰せられるのですか。
ただ実際に課された件はないようですが。。。
会社との調整
貴方が会社員でしたら、会社との調整が必要です。
裁判員候補に選ばれた事を公には秘密にしておかないといけませんが、会社に相談するのは公では無いのでOKという説明が付いてます。
ちゃんとした会社の就業規則には、労働基準法7条(公民権行使の保障)に従い「裁判員休暇」の項目が設けられていると思います。
よほどのことではないかきり「仕事を優先しろ!」とは言われないと思います。(そうであってほしい)
気になる方は、一度確認しておきましょう。
選任手続き当日
やってきました「選任手続き」当日。
はじめて裁判所に行きました。
今後の我が人生において、お世話になったり利用したりすることが無い穏やかな人生を送りたいものです。
▼ 福岡の裁判所 新庁舎
「高裁、地裁、家庭、簡易」の4つの裁判所が入っています。
⇒ 全国初「高地家簡」4裁判所が同居 福岡の新庁舎 (産経新聞)
裁判所に入ると、すぐ入り口に空港のようなセキュリティゲートが設置され、警備員も数人配置されています。
持ち物検査の金属探知機をくぐり、ボディチェックを受けます。
裁判所ですから、出所後恨みを持って本職の裁判官を狙って押しかけるやっかいなヤカラが居ないとは限りません。
緊張感が漂う場所です。
(職員の方は、顔パスで通ってるようでしたけど。)
受付で、呼出状を提出。
裁判所職員の方から、番号の付いたネックストラップをもらいます。
私は12番でした。
裁判が終わるまで、私は個人情報保護のため「12番」さんと呼ばれるらしいです。
裁判員候補者は大きな会議室に通され、開始時間を待ちます。
見ず知らずの老若男女がひとりふたりと入室し、緊張感張りつめる静けさ。
集まった裁判員候補者は、およそ30人。
事前に貰った資料でも、一裁判当たり80人ほどに呼び出しを行い、最終的に辞退を含め出席人数はこれぐらいになると書いてありました。
事前情報どおりの人数です。
今回の裁判では、この中から6人の裁判員と2人の補充裁判員が選ばれます。
▼ 出典:裁判員制度ナビゲーション(2018年10月改訂版,最高裁判所)より
定刻、会議室の扉が閉じられ選任手続きが開始されました。
「選任手続き」の大まかな流れはこちら。
9時30分から開始、11時30分ぐらいには終わり、ほぼ午前中いっぱいで終わります。
裁判員に選ばれた人は選任手続きの後、「裁判員宣誓」などがあるのでもう少し時間が延びます。
裁判所職員の方から冒頭に説明があったのですが、
裁判所敷地内は録画・録音・撮影禁止
ということです。
そのため、このブログ内で使える写真がほとんど撮れず、参考資料が少なくて申し訳ございません。
①裁判長挨拶
キリッとスーツを着こなしたナイスダンディな裁判長が候補者の前に立ってご挨拶。
社会的地位の高さを体現したかっこ良さです。
挨拶の中で今年で裁判員制度が10周年を迎えるということを伺い、制度施行から結構月日が経ってるんだなぁと感じました。
②ビデオ視聴
老若男女が居るので、動画を使った解説は分かり易いですね。
ざっくりと本日(選任手続き)の流れを把握することが出来ます。
私が実際に見た動画がyoutubeに置いてありました(笑)
③事件の説明
ここでやっと受け持つ裁判員裁判の事件概要が説明されます。
私のケースでは、傍聴情報として裁判所HP上には掲載されていない事件でした。
事件の内容は、守秘義務に係るところなので記載できませんが、
・自分の知ってる地域や場所で
・(実名で)どんな人が
・どんな犯罪に巻き込まれた
話を聞かされるのは、同じ街に暮らす住民として現実味が増す怖さがあります。
④裁判員候補へ質問
裁判員へ裁判長から質問があります。
質問内容は事前に伝えられ3つ程度。
訊き方は違うのですが、目的は「選ばれても裁判員できますか?」という内容です。
候補者の人数が多いためグループ分けをして全体に質問、さらに希望者には個別質問を行う形式でした。
質問は会議室の隣にある別室で行われ、裁判長・検察官・(被告の)弁護士の3者立ち会いの下行われます。
呼ばれた裁判員候補の中には、事情があると質問票に書いても裁判所から認められず選任手続きに出席してくださいと言われた人も居るので、そういう方が裁判長との個別質問の希望を出してると思います。
法廷見学ツアー
候補への質問が終わった後、「選任」が行われるのですが、結果が発表されるまで20〜30分ほど時間が余りました。
裁判所職員の方から発表までの待ち時間の間「法廷見学ツアー」のお誘いがありました。(参加自由)
開催されてるのは、私の出席した福岡地裁だけかもしれませんのであしからず。
職員の方の「法廷の写真撮影OKです」というお言葉に、俄然やる気が起こります。
絶対参加です!
職員の方にゾロゾロ連れられて、はじめて法廷に入ります。
見学させて頂いたのは、選任された際に使う裁判員裁判用の法廷でした。
私たちは傍聴席に座って、職員の方からの法廷設備の説明を聞きます。
・左右に検察側被告側と分かれてるのですが決まりがあるわけでは無く、裁判所の設計によっては違うことがあるらしい。
・裁判員用の法廷では、裁判長と裁判員が横に座って参加する。
・圧迫感を与えないように、被告の証言台が見下ろしにならない高さで裁判長裁判員席が設計されている。
知らない情報もあり勉強になります。
また「福岡地方裁判所」の庁舎、新築されて間もないので椅子などに使っている木材から良いニオイが漂います。
これは実際に行かないと分からない貴重な経験。
職員からの説明が一通り終わり、写真撮影タイムに入りました。
しかーし、ここで、
「撮った写真は個人利用に留めてください。
SNS・ブログ等へは上げないようにお願いします。」
というお言葉。
神聖な法廷ですからね、そうですよねぇ・・・。
ということで、テレビで見るような構図の写真をひとしきり撮りまくって、法廷見学ツアーの終了です。
いよいよ、裁判員発表のお時間です。
⑤裁判員の選任
「裁判員はコンピュータでのくじで選任されます」
と説明を受けていたので、個人的には会議室のモニター画面を見ながら、公開ビンゴ大会のように進んで行くものだと思っていました。
ところが、発表の形式はホワイトボードに裁判所職員がメモを見ながら、候補者の番号を殴り書きをするという大胆さ。
発表の瞬間も、室内にはどよめきや感嘆の声も上がることも無く粛々と進みます。
私は選ばれなかったのですが、やる覚悟をしてきた分、選ばれずガッカリしたという気持ちが湧き起こっているのに気がつきました。
そして、選ばれた裁判員・補充裁判員の方は番号で呼ばれ、別室につれて行かれます。
冒頭に見たビデオによると彼らは、恐らく裁判員としての説明受けたり「裁判員宣誓」を行う流れだと思います。
⑥裁判長からのお礼の言葉
一大イベントが終了し、アンケート用紙を記入。
最後に、裁判長からのお礼のお言葉を頂きます。
裁判員になれずに残念に思っている方もいるでしょうが、ご協力頂きありがとうございましたという内容でした。
私たちの心情をくみ取ったお話しを頂き、ありがたい事です。
⑦解散
解散。
私は、クビにぶら下げた12番の番号札を職員の方にお返しします。
呼出状に、「裁判所に来たよ」というハンコがもらえるので、会社への証明が必要な方は受け取って帰ります。
管理人はちく(@hachiku_89)のまとめ
気になるお手当
日当(半日分)+交通費
日当が1日8000円程度。
裁判所までの交通費は500円程度かかり、ざっくりと5000円程度のお手当を頂きました。
(交通費や入金口座は事前に届出を出します)
振込も迅速で1週間から10日程度で入金されます。
バイト代としては、労力もかからず割が良いと思います。
裁判員になれば、重い責任がのしかかる訳でそうとは言ってられませんけどね。
(裁判員も8000円です)
裁判員候補になって変わったこと
いざ自分が裁判員になるかもしれないという差し迫った状況に置かれ、おのずと裁判員制度についての情報のアンテナが高くなりました。
時期を同じくして裁判員制度10周年を迎えマスコミでも裁判員制度への課題を取り上げる特集が多く組まれており、目に付いた記事をなるべく読み漁るようになりました。
そこから得られたこととして、総じて右派も左派の新聞も割と「裁判員制度に否定的」な見解・論説が多く見られたのが残念。
これは自分の体感とは異なります。
一次情報に当たるべく裁判所のHPで裁判員の終わった後の座談会がアップされてことを発見。(ご存じでしたか?)
やはり経験者の生の声と言うのは、非常にタメになります。
⇒ 裁判員裁判の実施状況 ~経験者の声もお知らせします~(裁判員制度ウェブサイト)
⇒ 福岡地方裁判所 裁判員経験者の意見交換会議事録 (福岡地方裁判所)
新聞の特集記事の中では「凄惨な事件の証拠写真を目にすることでPTSDになる恐れがある、負担が重い」と論を張る新聞社がありました。
裁判員座談会では証拠写真はイラスト化されてあり、それほど負担無く受け入れることが出来たという裁判員の発言(記録)も見られます。
そんな点を総合してかみ砕くと、マスコミの結論ありきのキャンペーンの張りすぎかなぁと思うことがありました。
個人的体験としても周りの方々に私が裁判員候補になった事を伝えると、その点を心配していただく声を数多く頂くケースがありました。
これらの空気感は、これまでマスコミが作ってきた一般市民が裁判員を担うことに過度な負担がかかるというイメージを流布してる他ならないと思っています。
一部の裁判員がPTSDになった事例を拡大喧伝して裁判員制度を揺るがそうとする様は、注射の副反応を必要以上に取り上げてしまった「子宮頸がんワクチン」バッシングの二の舞にしか思えません。
まだまだ改善の余地と是々非々ある裁判員制度だとは思いますが、「一般市民の感覚を司法に取り入れる」という目的へ前進し続けるためにも、我々は冷静かつ穏やかに見守っていく立場を取っていきたいものです。